親は子どもの気持ちを経験しているから分かりますが、親や、老いることには初めての経験で全ての事が新しい経験で不安が一杯なのです。そんな中でもなかなか言えない気持ちを上手く表現された文章に出会えたのでご紹介致します。

 

『私のかわいい娘へ…』

私が老いていることに気付いたときには、
落ち着いて受けとめてね。

何より、私が直面している状態を
理解しようとしてほしい。

話をしているときに
私が同じ話を何回も繰り返したら、
「さっき同じこと言ったじゃない」なんて
言って遮らずに、ただ耳を傾けていて。

幼いあなたが眠りに落ちるまで、
私は幾夜も幾夜も同じ物語を
読み聞かせたわ。

私がお風呂に
入りたくないと駄々をこねても、
怒って私を責めないで。

あなたが小さな女の子だったころ、
言い訳をして逃げ回るあなたを追いかけて
お風呂に入らせなければならなかった
ことを思い出して。

新しいものに対して
私が無知であることに気付いたときは、
そんな目で見ないで、ゆっくり時間を
かけて覚えさせて。

覚えてるかしら、
私があなたにたくさんのことを
教えてあげたこと。

正しい食べ方、
お洋服の着方、髪のとかし方、
そして毎日ぶつかる人生の壁との
向き合い方まで、ね。

私が老いていることに気付いたときには、
落ち着いて受けとめてね。

何より、私が直面している状態を
理解しようとしてほしい。

私が何を話していたか
分からなくなってしまったときは、
思い出す時間をちょうだい。

そして、もし思い出せなくても、
心配したり、いらいらしたり、
馬鹿にしたりしないで。

私にとって何よりも大切なことは、
あなたと一緒にいることだという
ことを分かってね。

私が年老いて、
以前のように歩けなくなったときは、
やさしく手をとって。

あなたが初めて歩いたときに、
私がそうしたように。

そんな日がきても、
決してさみしいだなんて思わないでね。

私が最期の日を愛情に包まれながら
迎えられるように、ただそばにいて。

ともに過ごした時間、
ともに過ごすことができた幸せを、
あなたに感謝しています。

満面の笑みと、
いつ何時も絶やすことのない
あなたへの愛とともに伝えさせて。

文:椎野

 

愛する、私の大切な娘へ。